東京~大阪移動に北陸経由を選ぶ愉楽

東京6時16分発の「かがやき501号」敦賀行(2026年2月)

北陸新幹線を使って東京~大阪間を移動すると、東海道新幹線「のぞみ」より運賃と料金が総額で5000円以上高くなるうえ、所要も3時間近く伸びるが、東海道では味わえない車窓に楽しい旅となった。

大阪で生まれ育って首都圏に長年住んでいるので、東京と大阪の間は数えきれないほど移動し、できるだけ東海道新幹線に乗らない方法を模索してきた。

東海道新幹線が嫌だというわけではなく、学生時代は節約のため、近年はいつも同じルートの列車に乗ることを避けたい思いから続けてきたのだが、特に業務移動の際は何も考えず「のぞみ指定席」に乗る“無気力移動”も多い。

以前、「新幹線に乗らない東京~大阪旅の軌跡」と題した記事で各種試してきた経過を書いてみたが、これがなかなか難しく、新幹線に乗らないと時間の浪費が大きすぎる。

選択肢の一つである北陸経由は、かつて上野と金沢間を結ぶ夜行急行「能登」(2010年3月の臨時列車化を経て2012年春以降は事実上廃止)に乗れば安価で楽しめたこともあり、幾度か実践していたが、旅情は味わえるものの時間がかかりすぎるし体力的な負担も大きい。

かつて急行「能登」の自由席で北陸経由で東京から大阪間を移動するのが楽しかった(2005年、上野駅)

末期の急行「能登」は古い特急型電車が使われていた(2005年、上野駅)

越後湯沢から「北越急行ほくほく線」経由時代の在来線特急「はくたか」(越後湯沢~金沢~福井)経由も試したが、それなりに時間は要するので、いつの間にか億劫になって選択肢からは消してしまっていた。

その後、2015年3月にそれまでの「長野新幹線」を伸ばして「北陸新幹線」として石川県の金沢まで開業し、一昨年の2024年3月には福井県敦賀(つるが)まで延伸。東京から敦賀まで最短3時間10分ほどで結ばれることになった。

北陸新幹線の路線図、将来的には敦賀から小浜・京都を経由して新大阪まで延伸する計画がある(北陸新幹線建設促進同盟会の公式サイトより)

北陸新幹線の終点となった敦賀福井県内とはいえ、「新快速」が乗り入れるほど滋賀県寄りにあるので関西圏から限りなく近く、新幹線に接続して大阪への在来線特急も走っている。東京~大阪間の移動に使っても、それほど無理なルートではなくなった。そもそも、将来的には北陸新幹線の大阪延伸が計画されている。

「山科」経由の片道切符で安く

2026年1月時点で東京から大阪まで敦賀経由運賃特急料金を計算すると、以下のようになっている。比較のため、東海道新幹線経由も下に付した。

東京都区内→敦賀→大阪市内(北陸新幹線・湖西線経由)合計19,960円

  • 運賃(乗車券):10,340円(712.5km)
  • 北陸新幹線(指定席):7,230円(通常期)※参考・北陸新幹線(自由席):6,700円
  • 敦賀→大阪間特急(指定席):2,390円(通常期)

※2026年3月14日にJR東日本が値上げを予定

東京から敦賀までの新幹線指定席(通常期)の料金は7230円となっている

東京都区内→大阪市内(東海道新幹線経由)合計14,720円

  • 運賃(乗車券):8,910円(556.4km)
  • 東海道新幹線(指定席):5,810円(通常期)※参考・東海道新幹線(自由席):4,960円

東海道新幹線を経由する場合と比べ、敦賀経由だと総額で片道5240円(通常期)高くなる。3月14日にはJR東日本が値上げするので、以降はもう少し差が出ることになりそう。

そこで試したのが、片道×2枚の切符にせず、「東京→敦賀京都(山科)→東京」という形の“片道切符”とすることだ。JRの運賃は乗れば乗るほど安くなり、同じ駅を二度通らなければどこまでも買えるし、途中下車もできる。

山科経由の片道乗車券を買う合計15,760円(新幹線料金は別)

  • 東京都区内→東京都区内(北陸新幹線・敦賀・山科・東海道線経由):14,080円(1172.3km)
  • 区間外となる山科~大阪の運賃:840円×2=1,680円

敦賀からの列車が通る「湖西線」は京都の一つ手前山科という駅で「東海道本線」と分かれるので、山科経由にすると同じ駅を二度通らずに“片道切符”という形にできる。

ただし、山科から大阪までは片道切符の範囲外なので、別に買うことになる(着いた駅で山科から乗り越し精算する形で良い)。

特急サンダーバードの多くは敦賀と京都間をノンストップで走り、山科は通過する

また、山科駅には新快速は停まるが、敦賀発の特急「サンダーバード」は停車しない。京都駅で降りて新幹線などへの乗り換え時は追加料金を払わなくてもいい(そういう特例があるが、途中下車はできない

若干面倒な制約はあるが、片道ずつ買うようり3500円ほど安くなるし、最近ではJR東日本の予約サイト「えきねっと」でも山科経由の乗車券を予約できることを知った。

えきねっとで買っておけば、数少ない「みどりの窓口」に並んで係員に説明しなくても専用券売機で発券するだけなので楽である。

えきねっとで東京都区内から東京都区内まで「北陸新幹線」「山科経由」の片道切符を購入する場合の表示一例。行先を「目黒→品川」とし、経由駅に「金沢」「敦賀」「山科」を入れ、検索オプションで「乗車券のみ購入」にチェック。指定券を買わなくても、列車の検索結果に該当列車が無いと乗車券が買えない仕組みとなっているので、始発が出る早朝の時間を指定する(えきねっとの検索画面を一部加工)

上記の条件で検索した結果(2026年2月現在)、列車の乗り換え案内とともに、下部に東京都区内から東京都区内までの乗車券購入の案内が出てくる(えきねっとの検索画面より)

ちなみにこの「えきねっと」では「東京→敦賀」の経路検索をすると、列車本数の多い東海道新幹線で米原や京都から敦賀へ行く経路ばかりが表示される。

さすがのJR東日本もえきねっとの検索アルゴリズムを裏でねじ曲げるほどの勇気はなかったようで、「東京→敦賀」を検索した場合は、「乗り換え回数が少なく、JREポイントも貯まる」といった大型バナー表示を最前面に出し、クリックすると北陸新幹線経由で再検索する方法が取られていた。それだけ東京から敦賀まで北陸新幹線で直通する人はまだ多くないのだろう。

えきねっとで「東京→敦賀」を検索すると米原経由が表示され、右側には大きく北陸新幹線経由での自動再検索を促す表示が出てくる(2026年2月、えきねっとの検索画面より)

敦賀~大阪間は「新快速」も運転

東京から大阪まで敦賀経由で行く“一番列車”は下記のような乗り継ぎとなった。

  • 東京06時16分発:「かがやき501号」敦賀行(全車指定席)
  • 敦賀09時34分着
  • 敦賀10時14分発:特急「サンダーバード14号」大阪行(全車指定席)
  • 大阪11時36分着

6時16分の「かがやき」は北陸新幹線の始発列車なので、首都圏からもっとも早く長野・北陸方面へ着ける列車ということになる。敦賀で京都・大阪方面への乗り継ぎが40分待ちといまいちだが、休憩時間にちょうど良いし、昼前には大阪へたどり着ける

JR東日本は新幹線の「はやぶさ」や「かがやき」など長距離を走る速達列車を全車指定席としている

「かがやき」のように最速列車で急がず、車窓をゆっくり楽しむなら自由席のある「はくたか」(東京~金沢)と「つるぎ」(富山~金沢~敦賀)を乗り継いで行けば特急料金が少しだけ安くなるし、改札口からは出られないが改札内で駅弁や土産などを買い歩くのも楽しいかもしれない。

一方、敦賀と京都・大阪を結ぶ特急「サンダーバード」は全区間で1時間半も要しない短距離の“リレー特急”レベルなのに、JR西日本がわざわざ全車指定席に設定して増収につとめている。

敦賀から京都まではノンストップで走るほど短距離・短時間だが特急サンダーバードは自由席を廃止し、全車指定席化した

この区間は新快速1時間に1本の割合で走っており、京都まで約1時間40分大阪へは約2時間10分で行くことができるので、こちらに乗ってのんびり琵琶湖を眺めるのも悪くない。

車窓に日本海と出会える魅力

乗車までに長々と書いてしまったが、2026年1月下旬の平日、始発となる東京6時16分発の「かがやき501号」敦賀行に乗って大阪へ向かった。

東京駅から北陸新幹線に乗る客はそれほど多くないようだった(2026年1月)

今は新横浜駅から遠くない場所に住んでいるので東京駅から新幹線に乗るような機会が少なくなり、冬の早起きは若干辛いが始発列車に乗れる心地よさがある。

北陸新幹線はすべて同じ車両なので速達列車に乗っても停車駅が少ないくらいで、車内環境が変わるわけではない(2026年1月、「かがやき501号」敦賀行で)

家々とビルが密集した大宮までの車窓も、たまに見ると案外楽しく、並行する埼京線より若干速いくらいで走るので思わず眺め続けてしまう。新横浜から東海道新幹線に乗ると、すぐに猛スピードで横浜や神奈川県郊外の退屈な風景を見せつけられてきた反動なのだろう。

大宮で7割くらいの座席が埋まって、次の長野まではノンストップで走る。その間わずか55分。信州はこんなに近かったのかと思ってしまう。普段は停車駅の多い「はくたか」や「あさま」の自由席に乗りすぎている証(あかし)かもしれない。

高崎を過ぎ、山並みが近くなってきたが雪は降っていなかった

上越新幹線との分岐駅でもある高崎を簡単に通り過ぎるのを不思議に眺めつつ、長野県に入って軽井沢にいたると雪の白さが目立つようになり、次の上田は雪の街。7時36分に到着した長野は雪国という風景だった。

長野駅の付近は雪国のような風景となっていた

長野駅のホームにもうっすらと雪が積もる

長野で4割ほどの客を降ろして、信州の豪雪地帯である飯山を通過する頃にはもう深い雪の車窓が当たり前のようになり、温暖な東海道新幹線では味わえない気候の厳しさを実感させられる。

22キロ超におよぶという飯山トンネルで長野から新潟へ入ると、上越妙高駅のある上越市や妙高市の街並みは吹雪で見えないほどになった。

長野から新潟への県境付近はさらに雪が多かった

在来線だと筒石や能生(のう)といった海側を通るところを上越新幹線は数えきれないほどのトンネルで日本海へ抜け、糸魚川を通過する頃には市街の向こうに雪で境目の分からない灰色の海が広がる。

大阪に住んでいたときからそうだったが、首都圏から距離が遠いだけに日本海と出会ったときの嬉しさはより大きい。北陸新幹線に乗る最大の魅力ではないかと思う。

糸魚川駅の前後から日本海が右手(3列席=A席側)に広がる

難所の親不知(おやしらず)付近はトンネルの連続となってしまうが、糸魚川から黒部宇奈月までの区間で日本海を楽しむためには、3列席のA席側をおすすめしたい。3人席は最後まで真ん中のB席が埋まることはないので意外と快適だったりもする。

富山の市街地も雪で埋もれていた

昨日から天気予報で日本海側の大雪に注意するよう呼びかけられていたが、東京から2時間7分かけて8時23分に到着した富山の街は、高崎で分岐を間違って上越新幹線の越後湯沢へ来てしまったのかと思うほど雪で埋もれていた。

金沢でほとんどの客が降り、福井や敦賀までの乗客は少なかった

首都圏からの客の大半を富山で降ろし、北陸間移動のわずかな客とともに北海道のような風景のなかを走り、少し積雪が減って8時43分金沢着。東京から2時間30分弱、夜行急行「能登」で上野から7時間かけて夜通し移動したのはもう昔話ということか。

金沢で8割以上の客が降り、ガラガラになった車内には、全車指定席なので指定券を持っていないと乗車できないという車掌の肉声放送ばかりが響き、大雪で敦賀から接続する名古屋行の特急「しらさぎ」が運休する旨が一度だけ告知されたが、停車駅や到着時刻はアプリで確認せよと連呼している。

福井の市街も雪景色、北陸3県の中心地はすべて雪だった

金沢から敦賀までは初めて乗る区間だが、高架橋で在来線より目線が高くなったくらいで大きく変わることもなく、目線を遮る壁も多い。福井ほとんどの客を降ろし、敦賀へ近づくとより雪が多くなって、一体どこへ向かっているのか分からなくなってきた。

新北陸トンネルを抜けて敦賀の街に近づくと、より雪が深くなった

9時34分に終点の敦賀に到着、車窓に雪を見過ぎて東北新幹線の新青森あたりに着いたかのような感覚になった。たとえ雪がなくても、敦賀は日本の新幹線のなかでは位置感覚のつかみづらい終着駅かもしれない。

特急は新幹線ホームの下から発着

木目調の敦賀駅ホームへ降り立った人は少なかった

閑散とした敦賀駅の木目調ホームに降りて、新幹線の駅舎に新設された「東口・やまなみ口」で途中下車してみたが、美しく整備された駅前はびしょびしょの雪で歩けるような状況になく、“駅の裏側”なので今は何かがあるわけでもない。

新幹線ホームの階下に在来線特急のホームを新設したため、乗り換えは比較的近いが、新快速が発着する在来線ホームまでは少し距離がある

動く歩道もある長い通路で在来線側の“本駅”に移動し、小さな本駅舎のとなりに行政が交流施設の名で新設した待合室的な場所で土産物店などを見て過ごす。

敦賀駅のメインとなる駅舎(西口=まちなみ口)は在来線側にある

天気が良ければ駅前の大通りを歩いて、スーパー「平和堂」のある大型ショッピングセンター「アルプラザ」まで行けば敦賀の現状が垣間見られるだろうし、駅前から「ぐるっと敦賀周遊バス」に乗れば名所の気比神宮や敦賀鉄道資料館(金ヶ崎緑地下車)、名勝地「気比の松原」などへもアクセスできる。

敦賀駅舎(西口=まちなみ口)、駅舎と一体化したような右手の建物は交流施設という位置付けで市が建てた「オルパーク」

駅舎的な「オルパーク」には観光案内所や土産物店、売店、そば店などが入っており、途中下車して一度は訪れたい

「かがやき501号」に接続する大阪行の特急「サンダーバード14号」の指定券を買っていなかったので、その4分後に出る10時20分発新快速で大阪(12:28着)まで移動しようと在来線のホームへ行くと、大阪方面からの折り返し列車が大雪で遅れているので当分出発できないだろうと告げられる。

在来線ホームには、新幹線開業で並行する旧北陸本線(在来線)を第三セクター化した「ハピラインふくい」の車両も見える

新幹線・特急のりばと在来線ホームの間には動く歩道も整備された

寒いホームでいつ着くか分からない列車を待つのもつらいので、新幹線駅舎の下部に新設された特急専用ホームへ急ぐ。在来線ホームからは少し遠い。

新幹線開業とともに新設された在来線特急用のホームから「サンダーバード」(敦賀~京都~大阪)や「しらさぎ」(敦賀~米原~名古屋)が発着する

券売機で急ぎ特急指定券を買って次の10時44分発サンダーバード16号」に乗り込む。接続する新幹線が着くとほぼ満席となり、定刻通り出発。次の京都までノンストップで走る。

敦賀駅を出るとさらに雪が深くなった

福井と滋賀の県境にある新疋田(しんひきた)付近は、一体どこの雪国へ迷い込んだのかと思うほど雪が深い。反対の線路を遅れている新快速が苦しそうに走っているが、都心を走る通勤型電車でもこれだけの大雪に耐えられるのかと思う。

県境に近い新疋田駅では遅れている「新快速」の姿も見えた

湖西線に入っても雪が続いていたが、付着した雪の影響を見るためとして臨時で運転停車した近江舞子あたりから車窓に積雪が消えていき、その先はつい数十分前の大雪が嘘のように乾燥した曇天風景に変わる。

車両に付着した雪の状態を確認するため近江今津駅で運転停車、ここまで来ると雪が少なくなってきた

あとは琵琶湖の車窓だけが楽しみだが、誤って山側の「A席」を買ってしまったので、反対側の窓にちらちら映る水面を眺めて過ごすことになった。サンダーバードでは「D席」が良いようだ。

湖西線は琵琶湖の近くを走り、サンダーバード号ではC・D席が湖側となる

北陸でここまでの大雪となるような日は多くはないはずだが、北陸経由はできるだけ予定を終えた帰路などに使うべきかもしれないと思った。東海道新幹線が遅れれば同情の余地もあるのだろうが、北陸新幹線が遅れて予定に間に合わなくなっても、誰にも理解してもらえない。

ただ、東京と大阪を移動する際に一度は試してみる価値があり、車窓の変化を楽しみつつ、途中下車をしながら帰路に就くには適したルートだと自信を持って言える。

(2026年2月公開)