欧州3カ国のロンドン・パリ・ウィーンを巡る鉄道旅で、通り道として立ち寄ったドイツ・ミュンヘン(München)には、首都では味わえない第三の都市ならではの落ち着きがあり、街をのんびり散策できるスポットも多く、地下鉄などの公共交通機関も充実していた。
「パリ~ウィーン」間の6都市を比較
鉄道でパリからウィーンまで一気に移動せず、途中で宿泊をはさむ場合はどの辺りが最適なのだろうか。
無理のない位置で宿泊に適した都市を挙げると、次の3カ国・6都市が該当した。
- ストラスブール(Strasbourg、フランス)
- シュッツガルト(Stuttgart、ドイツ)
- チューリッヒ(Zürich、スイス)
- インスブルック(Innsbruck、オーストリア)
- ミュンヘン(München、ドイツ)
- ザルツブルク(Salzburg、オーストリア)

パリ~ウィーン間にある6都市の位置図(eurail.comの「ユーレイル路線図 (Eurail map)」を加工・加筆して制作)
ストラスブール(フランス)は世界遺産都市として観光・宿泊の価値は十分にあるが、ウィーンまでの距離が遠すぎる。
シュッツガルト(ドイツ)は鉄道ルート的に見て途中下車に適した位置といえるが、観光要素に若干欠ける。
チューリッヒ(スイス)は、スイス最大という都市の格も観光地としても申し分ないが、スイスフラン高と物価高でホテル代が心配だ。
インスブルック(オーストリア)は位置的に少し行きづらく、ザルツブルク(同)だとウィーンへは近いがパリから1日で一気に移動するには遠い。
そう考えると、ミュンヘンはドイツ第三の都市でホテルの数も多く、パリからは約850キロと距離こそあるが、フランス国内の高速線(TGV)により最短5時間30分ほどで済むし、ウィーンへも約460キロ・最短4時間20分と移動時間で見ると“真ん中”的な位置といえる。円安なのでホテル料金は安価とは言えないが高くもない。
もし、欧州サッカーが好きなら独ブンデスリーガ(Fusball-Bundesliga)の強豪「FCバイエルン・ミュンヘン(FC Bayern München)」のホームタウンを訪れるという価値も見出せる。その知名度と実力は欧州でもトップクラスで、スタジアムも中心部から遠くはない。
ビール好きならミュンヘンが起源で毎年行われている「オクトーバーフェスト(Oktoberfest)」が興味深いのではないだろうか。ただ、開催は9月下旬から10月上旬のわずかな期間に限られる。
サッカーやビールだけでなく、ミュンヘンを中継地とするメリットには、パリからの通り道となるストラスブール、チューリッヒ、ザルツブルクの3都市で“駅前観光”を楽しむことができる点がある。
ルートと列車を探すにあたっては、インターネット上の鉄道路線図と列車検索サイトを探り、日本語翻訳機能を活用した。かつて欧州鉄道旅の必携と言われた英トーマス・クック社の“赤いヨーロッパ鉄道時刻表”は、もう日本で販売を止めてしまったようだ。
インターネット上では、日本語で「ユーレイルパス」などの各国鉄道パス販売を行っている「ユーレイル(eurail)」のサイトが解説もあって分かりやすい。加えて欧州各国の鉄道会社も列車検索の機能を提供していた。
もっとも使いやすかった列車検索がスイス連邦鉄道「SBB」(※本来は「SBB/CFF/FFS」と独仏伊の3カ国語で略称表記されているが、長いため本稿では代表的なSBBのみとした)で、全停車駅の表記だけでなく、乗場案内や路線図まで表示される充実ぶりだった。
人口150万都市と観光スポット
そんな過程を経て途中宿泊地として選んだミュンヘンは人口が150万を超え、ベルリン(368万人超)とハンブルク(186万人超)に次ぐ「ドイツ第三の都市」となっている。
日本では神戸とか川崎といった人口規模の都市だが、両市のように隣接する大阪や横浜・東京といった巨大都市は無く、ミュンヘン自体がバイエルン州をけん引する中心都市だ。
観光スポットは中央駅(Hbf=HauptBahnhof)から比較的近い「マリエン広場(Marienplatz)」と、その奥の「オデオン広場(Odeonsplatz)」付近に集中していて、仕掛け時計で有名な「新市庁舎(Neue Rathaus)」をはじめ、「ミュンヘン大聖堂(Frauenkirche)」や旧王宮の「ミュンヘン・レジデンツ(Münchner Residenz)」などは巡りやすい。
郊外の観光地である離宮「ニンフェンブルク城(Schloss Nymphenburg)」は中央駅からトラム(路面電車)1本でアクセスでき、所要は20分ほどだ。

ニンフェンブルク城(Schloss Nymphenburg※停留所名板の「Schloß=シュロス」は古い綴りで表記)の停留所(写真)へ行くには、トラムの「17番」「Amalienburgstr(アマリエンブルク通り=Amalienburgstraße)」と表示された電車に乗る(2024年12月)
同じく郊外にあるFCバイエルン・ミュンヘンの本拠地「アリアンツ・アレーナ(Allianz Arena)」は、地下鉄「Uバーン」(Münchner U-Bahn)のU6号線・フレットマニング(Fröttmaning)駅が最寄りで、中央駅から約25分の距離にある。
地下鉄Uバーンをはじめとした公共交通機関は充実していて、直前に滞在したパリと比べると治安面で格段に落ち着いているように感じた。若干古めかしい電車も見られるが、駅も車両も全体的に清潔感がある。ただ、中央駅は暴力事件の多さでドイツ有数であるとの報道も見られるので、油断がならない。
地下鉄「Uバーン」中心に交通充実

MVG(ミュンヘン交通会社)による交通ネットワークマップは地下鉄「Uバーン」、近郊鉄道「Sバーン」、路線バス(ExpressBus)、トラム(路面電車)などがまとめて表示されており、慣れないと見づらい(MVGの観光客向けページで公開されている「MVV Netzplan S-Bahn, U-Bahn, Regionalzug」に中央駅(Hauptbahnhof)など観光の重要駅を赤色に塗った)
ミュンヘンの公共交通機関については、地下鉄「Uバーン」8路線のほか、ドイツ鉄道「DB(Deutsche Bahn)」の郊外電車が中心部の地下区間を走る「Sバーン」(S-Bahn München)も存在する。
Uバーン(地下鉄)とSバーン(郊外電車)の2つをあわせて“ミュンヘン地下鉄”といえ、中央駅付近では並走区間もあるので、どちらに乗っても構わない。ただ、Sバーンは郊外へ行く路線なので、観光では中心部以外で使うことは少ないかもしれない。

トラムでは大半の路線が「中央駅」(HauptBahnhof、南と北も含む)か「カールスプラッツ(シュタフス)」(Karlsplatz(Stachus))の停留所を通る(写真は中央駅、2024年12月)
地上を走るトラム(路面電車)も市内の約82キロに12路線を伸ばしていて、中央駅へ行けばほぼ全路線に乗車可能だ。
このほか今回は使わなかったが“市バス”(Busverkehr in München)も90路線以上におよぶ。

市内を走る路線バスには「急行バス(ExpressBus=X+2桁の路線番号)」「メトロバス(MetroBus=2桁の路線番号)」「シティバス(CityBus=3桁の路線番号)」がある。写真のシティバス100番は 「ミュージアムライン(Museum Line)」として中央駅北(Hauptbahnhof Nord)からミュンヘン東駅(Ostbahnhof)まで多数の美術館を巡る(2024年12月)
2駅まで短距離券2€、1日券は9.7€
これら公共交通の大半にミュンヘン交通会社(MVG=Münchner Verkehrsgesellschaft)が関与しており、券売機などでは頻繁に「MVG」のロゴを見かけるはずで、チケットはすべて共通となっている。
運賃は短距離券「クルツシュトレッケ(Kurzstrecke)」(鉄道は2駅まで、トラム・バスなら最大4停留所まで利用可。鉄道2駅+トラム・バス2停留所の乗り継ぎも可、最大1時間有効)と呼ぶ短距離の片道乗車券が2ユーロ(320円)で、これが初乗り運賃的な位置付けといえる。
(※)運賃はいずれも2025年1月に改定済みの情報
(※)1ユーロ(€)=160円で計算
中央駅からマリエン広場(マリエンプラッツ=Marienplatz駅)やオデオン広場(オデオンスプラッツ=Odeonsplatz駅)は、地下鉄Uバーン(Sバーンも含む)で2駅以内なので、この2ユーロの短距離チケットで済む。
一方、通常の片道チケット(Einzelfahrkarte=アインツェルファーカルテ)は4.10ユーロ(656円)、6~14歳は1.90ユーロ(304円)という設定。
「Mゾーン」という中心部から出ることはできないが、地下鉄Uバーンの駅はほとんどMゾーン内にあり、かなりの郊外部へ行かない限りは4.10ユーロの片道券で済む。ゾーン内で最大2時間有効だ。Mゾーンを出るとゾーンに応じて6.10ユーロ、8.10ユーロ…と高くなっていく。
ニンフェンブルク城やアリアンツ・アレーナはMゾーン内にあるので、運賃は片道4.10ユーロということになる。
いちいちチケットを買うのが面倒な場合は、「1日券」(Single-Tageskarte)を買えば9,70ユーロ(翌日の午前6時まで有効)(1552円)で市内の観光地はほぼ網羅できる。
また、1日券は「グループ1日券」(大人5人まで有効、6歳~14歳は0.5人カウント)(Gruppen-Tageskarte)という設定もあり、価格は18,70ユーロ(翌日の午前6時まで有効)(2992円)なので大人2人以上で使えば割安となる。
切符のチェック無し、自ら打刻を
ミュンヘンの駅ではチケットをチェックするための有人改札口や改札機を設けない“信用乗車方式”をとっており、チケットを購入して乗車する際、最初に日付などを入れる“改札”を自らの手で行わなければならない。
地下鉄ではホームへ降りる階段近くなどに打刻機があるので、そこへ紙のチケットを入れれて刻印されればその時点から有効ということになる。
打刻(有効化)を行っていないと、有効なチケットを持っていないとみなされ、車内などでの検札時に見つかった場合は不正乗車(チケット無しの乗車)として扱われる。
この際に故意か過失か偶然かは判断されることはなく、検札時に有効なチケットを示せなかった時点で60ユーロ(9600円)の“割増運賃”が徴収される。

MVG(ミュンヘン交通会社)は“不正乗車”と判断した際に乗客が支払う60ユーロの支払い方法に関するページを設けており、若干微妙な翻訳だが日本語対応のページまである。60ユーロは駅の券売機でも支払えるとのこと(https://www.mvg.de/services/ebe.html より)
“プラッツ”駅の多さに少し困惑
2024年クリスマスの夜に着いたミュンヘン、翌12月26日の朝から観光へ出かけることにした。気温は氷点下となっているようだが、雪がまったくないので、より寒く感じてしまう。
大型券売機の画面に日本語が選択できたことに驚かされながら、“短距離チケット”を買って地下鉄「Uバーン」で中央駅からマリエン広場の最寄りであるマリエンプラッツ駅へ向かう。
Uバーンではなく、郊外列車の「Sバーン」なら中央駅からマリエンプラッツ駅まで2駅で行けることを知らず、Uバーンで反対方向の列車に乗ってしまったり、誤ってオデオンスプラッツで降りてしまったりしながら、30分ほどかけてようやく到着。
ミュンヘンには、カールス、オデオン、マリエンと有名なものだけでも「プラッツ(広場)」と付く駅名が中央駅の至近に集中しており(さらにシュティグルマイヤープラッツやケーニヒスプラッツなどもある)、初心者にはどこがどこだか分からなくなる時がある。
そして、列車の行先(終点)を認識しておくか、列車の停車駅をチェックしておかないと反対方向に乗ってしまうミスも起きやすい。
中央駅から3つの“プラッツ系観光地”を訪れる場合、Sバーンは「Ost-Bahnhof(オストバーンホーフ=ミュンヘン東駅)」方面行、Uバーンの「U4(みどり色)」ラインは「Arabellapark(アラベラパーク)」行、「U5(うすい茶色)」なら「Neuperlach Süd(ノイパーラッハ南駅)」行に乗る。
これらすべて次駅は「カールスプラッツ(Karlsplatz)」であり、次々駅はSバーンが「マリエンプラッツ」、U4とU5は「オデオンスプラッツ」となっている。つまり、中央駅からSバーンかU4・U5に乗れば“3プラッツ観光地”へ直行できた。
なお、中央駅からマリエンプラッツまでは歩いても20分弱なので、寒さや暑さが厳しくない日は地下鉄に乗らずに大通りを歩いたほうが楽しいかもしれない。
マリエン広場の「新市庁舎」へ
マリエン広場は、地下駅構内から地上へ出た瞬間に全長100メートルにおよぶ巨大宮殿のような「新市庁舎(Neues Rathaus)」が出迎えてくれる。
中世ヨーロッパのような建築物を「新」市庁舎と呼ぶのも不思議だが、日本でいう明治42年、1909年までに完成したものだという。近くに残る「旧」庁舎は日本の室町時代にあたる1475年までに完成したとされているので、長い時間軸で見ると確かに相当新しい。
この“新”市庁舎の名物とされるのが仕掛け時計で、11時と正午(3月~10月は17時にも追加実施)に毎日塔の隙間から人形が出てきてカリヨンの響きに合わせて回ったり踊ったりするという。
そんなミュンヘンの一大名物を見るべく広場は観光客で埋め尽くされている。確かに一見の価値はあるのだろうが、この寒空の下で見るべきものかどうか、観光スポットとしてはすごいが古庁舎で勤務する役人は大変なのではないか、などと雑念だらけの頭で冷気に耐えながら見学した。今朝は寒い。
開いていたのは著名な教会だけ
マリエン広場に通じる歩行者道「カウフィンガー通り(Kaufingerstraße)」と「ノイハウザー通り(Neuhauser Straße)」はミュンヘンを代表する大型ショッピングストリートとなっているが、きょう12月26日はクリスマスの翌日ということでほぼ全店が閉店となっていた。
イギリスではクリスマスに働かざるを得ない人たちのため、翌12月26日は箱に入れたプレゼントを配るという由来の「ボクシングデー(Boxing Day)」という祝日名が一般的だが、ドイツでも同趣旨なのか“国民の休日”となっている。
オーストリアもイタリアも「聖ステファノの日(St. Stephen’s Day)」として同様に休みとする一方、フランスはドイツに近いアルザスなど一部地域を除き通常の平日だというが、欧州の旅にあまり適した日ではないことは確かだ。
そして広場では、イブの12月24日まで賑やかに行われていたであろう「クリスマスマーケット」の残骸を片づけていて、“祭りのあと”の虚しさも存分に漂っている。
日本は元旦でも繁華街のコンビニとか商業施設とか開いている店もあるが、ここはドイツ。観光客がいくら大量に集まっていようと休みの日は休むという姿勢で、店舗はことごとく閉じられていた。
こんな時でも通常通りに開けていたのが教会だ。ミュンヘン大聖堂(Frauenkirche)の近く、ノイハウザー通りの観光スポットとしても知られる「イエズス会・聖ミヒャエル教会(St. Michael)」は、日本で豊臣秀吉が朝鮮侵攻に明け暮れていた時代の1597年にこの地で誕生したという。
荘厳というほかない室内ホールではクリスマスコンサートが行われていて、前方席の信心深い人々から少し離れ、私のように行き場を失った観光客らは後方になんとなく集まって立っていた。
日本にキリスト教を伝えたイエズス会の教会ということもあるのか、日本語のパンフレットが販売されていたことに驚かされる。
室内には第二次世界大戦中に大きな被害を受けた際の写真も展示され、ドイツでは攻撃を受けた歴史的な建物をことごとく復元したと聞くが、この教会もそうした建築物のようだった。
修道院発ビール醸造所と源流の店
聖ミヒャエル教会を出ると、斜め前と言える場所で1つのビルだけが灯りをともし、営業している飲食店を見つけた。ビアホールらしいが、昼食の場に選択の余地はなさそうだ。
この氷点下に昼間からビールを飲むのか、と躊躇しながら店内へ入ったが、ドイツのビアホールで出される麦酒が不味いはずもなく、時間が経つにつれ、もうここですべての観光を終えても良いくらい充実した気分に陥る。
「アウグスティナー・シュタムハウス(Augustiner Stammhaus)」と名付けられたこの店は、ノイハウザー通りの全店が休む“国民の休日”であっても店を開ける姿勢に見られるように、ビル全体がレストラン・ビアホールとなっているミュンヘンの著名老舗店だ。
1328年に醸造を開始したというミュンヘン最古のビール醸造所「アウグスティナー・ブロイ(Augustiner Bräu)」の源流とされる場所の一つでもあるらしい。
先ほど見学したイエズス教会のとなりにある建物(現ドイツ狩猟漁業博物館)は、かつて「アウグスティヌス修道院教会(Augustinerkirche)」として使われており、ここでビール醸造を行っていたのが現在まで続く古き醸造所の始まりだという。
函館のトラピスト修道院クッキーどころの話ではなく、“ミュンヘン修道院ビール”なので民業圧迫だと幾度も苦情を受けたらしいが、400年以上続けた末、世俗化で修道院は国家が接収。
ビール醸造所も民営化とオーナー変更を経て、1817年までには斜め向かいのレストランビルの場所へ移転し、醸造所として使っていたと見られ、1884年には生産拡大のため醸造機能を郊外(現在のアウグスティナーが本社醸造所を置くランズベルガー通り)へ移転した。
残された土地には著名建築家の手で1897年までに現在のビルが建てられ、「シュタムハウス(独語で本社の意)」の名で現在もレストランとビアホールを営業している、といった長い経緯を公式サイトなどから読み取った。

この日(12月26日)の代表的なビールの価格は「アウグスティナー・エーデルストフ・ヘレス(Augustiner Edelstoff hell)」が250ミリで3.1ユーロ(496円)、500ミリが4.55ユーロ(728円、写真)だった。なお、公式サイトで公開されている2025年7月時点のメニューによるとビール「アウグスティナー・ラガー(AUGUSTINER Vollbier)」は500ミリは4,2ユーロ(672円)から存在したので、提供するビールの銘柄によって変わる可能性がある
私の歴史理解が正しいとすれば、観光地として名高い州立醸造所のビアホール「ホフブロイハウス(Hofbrauhaus am Platzl)」以上の由緒かもしれないと後で思ったが、ビールや料理を味わっている時はただ美味いだけで、そんなことは気にも留めていない。

ミュンヘン最古とされるアウグスティナー・ブロイ(Augustiner Brau)の瓶入りビールはミュンヘン駅地下のスーパー「エデカ・エルンスト(EDEKA Ernst)」でも売っていた、日本ではなかなか味わえない(2024年12月)
クリスマス休日に“アウグスティナー旧醸造所本社ビアホール”が営業してくれていたことに感謝しつつ、ミュンヘンビールに後ろ髪を引かれながら次の観光スポットへ向かった。
ニンフェンブルク城は路面電車で
欧州観光といえば宮殿、ということで著名スポットである離宮「ニンフェンブルク城(Schloss Nymphenburg)」を外すわけにはいかない。ここはトラム(路面電車)の「N17」で行くことができる。
ミュンヘン中央駅の駅舎正面、バンホーフプラッツ(Bahnhofpl)にある停留所がニンフェンブルク宮殿(Schloss Nymphenburg)方面行の乗場だが、現在の中央駅は大規模な駅舎工事が進行中で雑然としていた。
地上から駅正面へは直接アクセスしづらいので、地下道から「ハウプトバーンホーフ(Hauptbahnhof)」の停留所へ行くことになる。

ミュンヘン中央駅のトラムとバスの乗場案内、左右の通りは「北(Hauptbahnhof Nord)」と「南(Hauptbahnhof Süd)」の停留所名が付けられている。なお、駅は長期にわたって工事が続くため、乗場が変更される場合もある(MVGによるバーンホフスプラッツ=Hauptbahnhof Bahnhofsplatzの「停留所とエリアマップ」より)
中央駅には左右の通りにも「中央駅北(Hauptbahnhof Nord)」(アルンウルフ通り=Arnulfstraße)と、「中央駅南(Hauptbahnhof Süd)」(バイアー通り=Bayerstraße)があり、ニンフェンブルク方面へ行く17番は中央駅北からも乗車できる。
また、17番は「カールスプラッツ(シュタフス)(Karlsplatz(Stachus))」の停留所(1番のりば)も経由しており、マリエン広場などの観光後は、ここから乗車するのが便利だ。
いずれも「Amalienburgstr.(アマリエンブルク通り=Amalienburgstraße)」と表示された方向の列車に乗り、カールスプラッツから13停留所目、中央駅から12停留所目、中央駅北から11停留所目がニンフェンブルク宮殿(Schloss Nymphenburg)の停留所で、ここまでは20分もあれば着く。
ただ、宮殿の庭が広大で、停留所からチケット売場まではたっぷり10分ほど歩くことになる。
美人画ギャラリーを残した国王
ニンフェンブルク宮殿は、バイエルン公国(ミュンヘンが位置するバイエルン州などが領域、バイエルン選帝侯領=Kurfürstentum Bayern)を支配したヴィッテルスバッハ家(Wittelsbach)の離宮で、1664年に着工し、1679年までに最初の完成を見たという。
日本でいえば江戸前期、四代将軍の徳川家綱から五代・綱吉に代わろうという時代に作られてその後も拡張が続けられ、マクシミリアン2世エマヌエル(Maximilian II Emanuel)(1662~1726年)が選帝侯の時代に現在の規模になったとのこと。
寒空のなか、停留所から10分以上歩いたので庭の広さは十分に理解できたが、宮殿内に入るまでに体力を消耗してしまった。ミュンヘンビールを味わいすぎたのかもしれない。欧州に入って6日目となり、華美な宮殿や文化財に食傷気味でもある。
宮殿内では、1825年にバイエルン国王に就き、愛妾がきっかけで後に退位することになったルートヴィヒ1世(Ludwig I.)(1786~1868年)が残した“美人画ギャラリー(Schönheitengalerie)”がもっとも有名だ。
そんなことを事前に知っていれば愛妾の踊り子「ローラ・モンテス」の絵を探す楽しみもあるのだろうが、不勉強かつ語学不自由さゆえに、ぼんやり眺めて終わってしまった。
そのルートヴィヒは皇太子だった頃の1810年、のちに王妃となるテレーゼと結婚式をあげ、この時に多数の祝賀行事が行われたことがミュンヘンの名物行事「オクトーバーフェスト」につながったと言われる。
他の行状や歴史的な評価はともかく、美人画ギャラリーやオクトーバーフェストという観光遺産を現在に残したという点で、バイエルン王国第二代国王・ルートヴィヒ1世の功績は大きいのかもしれない。
トラムで郊外の車窓を楽しむ
ニンフェンブルク宮殿(Schloss Nymphenburg)の停留所から「N17」に乗ったが、往路と同じ車窓を見ているだけではつまらなく思え、中央駅で降りずに行けるところまで乗ってみようと思った。時間は15時30分、外が眺められるのもあと1時間あるかどうかだ。
トラム(路面電車)のある街はまずフリー券を買って乗り続けているだけで観光になると思う。バスでは運転本数の面で若干不安だが、路面電車は均一の間隔で運行されていることが多く、どこで降りても日中ならなんとかなるのもいい。
あらゆる道路に専用軌道も併設されているようで、車に邪魔されることもなく低床の連接車がくねくねと曲がりながら市街地を抜けていく。
旧市街のように見どころのある建物は少なく、集合住宅やオフィスが多いので観光的な要素は少ないがミュンヘン市民の日常を感じられるのは楽しい。2025年2月に連邦議会の選挙を控えているせいか、車窓に政治家のポスターが目立つ。
40分ほど乗車して陽が落ち、ミュンヘンを縦断するイザール川(Isar)を渡って郊外感が増してきたので、地下鉄と最後の接続駅となる「アラベラパーク(Arabellapark)」の停留所で下車。ここはUバーン「U4」が起点としている駅だ。
アラベラパークは、緑の多い均整がとれた郊外拠点といった場所で、病院や公共機関に加え、商業施設やホテルも駅周辺に置かれているようだった。
夕暮れに加え、雨も落ちてきたので階段を降りて地下鉄ホームへ向かう。今日何度目かのミュンヘン市章を付けた薄い青色の古参電車がやってきた。最初に見たときは昔の共産主義国の地下鉄車両みたいだと思ったが、車内は向かい合わせの座席が並んでいて居心地は悪くない。
トンネルなので車窓は見えないが、8つ先の中央駅まで乗り心地でも楽しもうと思う。
明日は中央駅からオーストリアのザルツブルグを経由して、最後の目的地であるウィーンにようやく着く。
(2024年12月旅行、2025年8月記事公開)








































