軽快ウィーン観光 市内&空港の移動術

ウィーン大学前を走る路面電車

オーストリアの首都・ウィーン(Wien)は中心部の「インネレ・シュタット(Innere Stadt=インナー・シティ)」と呼ばれる3キロにも満たない範囲内に重要スポットが集中し、路面電車(Straßenbahn Wien)と地下鉄「Uバーン(U-Bahn)」も縦横に細かく走っていて観光しやすい街だ。ウィーン国際空港(Flughafen Wien)への鉄道アクセスも含め、市内の観光と交通事情を紹介する。

下に掲載したウィーン市内の地下鉄・路面電車・路線バスを運行する「ウィナー・リーニェン(Wiener Linien=ウィーン市交通局)」制作の市内中心部ネットワークマップ(Network maps)を見ると、少し細かいが観光スポットの多くを地図内に見つけられるのではないだろうか。

ウィナー・リーニェン(Wiener Linien=ウィーン市交通局)による中心部の交通ネットワークマップに、日本語での読み方一例と日本語訳例を加えた(Wiener Linien Network map「City centre service」より)

3キロ圏に観光スポットが集中

ウィーン最中心部の自治体であるインネレ・シュタット(Innere Stadt=インナー・シティ)の範囲を示すと、下の赤い色の範囲が該当し、大半の観光地と主要駅を含んでいることが分かる。

インネレ・シュタットは中心部に置かれた地下鉄12駅のうち9駅を含んでおり、カールスプラッツ(Karlsplatz)とシュタットパーク(Stadtpark)、ラントシュトラーセ(Landstraße、ウィーン・ミッテ駅連絡)の3駅も境界からわずかに離れた位置にある(Wiener Linien Network map「City centre service」に日本語での読み方一例と日本語訳例を加え、インネレ・シュタットの範囲を示した)

インネレ・シュタットの範囲は、東京で言えば「丸の内」全域と皇居全域(外苑や北の丸公園含む)を合わせたくらいの広さ。東西南北がおおむね3キロの範囲となり、“ミニ千代田区”といった雰囲気だろうか。

道に迷わない限り、街の中であれば目的地まで徒歩で30分を超える距離となることはほとんど無く、時間に余裕があって気候も良ければ、歩いて観光地を巡るのも難しくはない。

ウィーンには著名な観光地以外にも多数の見どころがあり、歴史的な建物やスポットには旗の目印も(2024年12月)

グーグルマップを駆使すれば、地下鉄や路面電車、路線バスに乗るより目的地に早く着けるかもしれないし、歩くことで自分だけの新たな見どころや風景も発見できるのではないだろうか。

幸いなことに、パリのように街の治安面で大きな不安は感じられないためか、一人で観光している日本人をたびたび見かけた。

歩いて観光していても治安的な不安はあまり感じなかった(2024年12月)

オーストリアの都市が日本ほど安全かどうかは判断しづらいが、個人的な体感として治安の良さを感じたし、欧州5カ国の観光地を巡ってきたなかで一定数の日本人観光客がいたのはウィーンとザルツブルクくらいで、女性が目立っていた。

地下鉄と路面電車で観光地を巡る

地下鉄「Uバーン」の乗場は「U」のマークが目印(2024年12月)

主要観光地から次の観光地へおおむね3キロ以内で着いてしまうウィーンだけに、歩いて巡るのが一番楽しいのではないかと思うが、時間を有効活用する場合は地下鉄Uバーン(U-Bahn)」や「路面電車(Straßenbahn Wien=シュトラーセンバーン・ウィーン)」を使うのが便利だ。

鉄道の玄関口であるウィーン中央駅(Wien Hauptbahnhof)やウィーン西駅(Wien Westbahnhof)に着いた際や、宿泊場所へ移動する場合などに一度は地下鉄Uバーンに乗るのではないだろうか。

シェーンブルン(Schönbrunn)駅に停車する「U4」線の電車、右側に写る古い駅名板は建築家のオットー・ワーグナー(Otto Wagner、1841~1918年)が地下鉄の前々身となるウィーン市営鉄道(Wiener Stadtbahn、1898~1925年)時代に携わったものとされる(2024年12月)

観光地巡りでも、中心部から離れた「シェーンブルン宮殿(Schloß Schönbrunn)」へは地下鉄「U4」でアクセスするのが一般的だ。

路面電車は、城壁跡の中心部をぐるりと一周する環状道路「リンクシュトラーセ(リング通り=Ringstraße)」に半周ずつ乗り入れる「1番」や「2番」は利用価値が高い。

路面電車「シュトラーセンバーン・ウィーン(Straßenbahn Wien)」のカールスプラッツ停留所(Karlsplatz)と「1番」の電車(2024年12月)

両線を国立歌劇場(オーパー,カールスプラッツ=Oper,Karlsplatz)やシュヴェーデンプラッツ(Schwedenplatz)駅の付近にある停留所(電停)で乗り継げば、重要スポットが集中するリンクシュトラーセを一周でき、これだけでも貴重なウィーン観光となるだろう。

地下鉄「U1」と「U4」が交わる「シュヴェーデンプラッツ(Schwedenplatz)」は路面電車も「1番」と「2番」の両方が停車するので、リンクシュトラーセを一周する際の拠点としても使えそう(2024年12月)

また、郊外のハイリゲンシュタット(Heiligenstadt) にある「ベートーヴェン記念館ハイリゲンシュタットの遺書の家=Haus des Heiligenstädter Testaments)」へは、路面電車ターミナルの「ショッテントーア(Schottentor)駅」から路面電車の「37番」に乗り、終点の「ホーエ・ヴァルテ(Hohe Warte)」停留所で下車するのが便利だ。

地下鉄「U2」のショッテントーア(Schottentor)駅は、地上と階下の双方に路面電車の停留所(乗場)があり、計10路線が停車する。写真は階下の乗場に到着した「37番」(2024年12月)

赤の「U1」とオレンジ「U3」が重要

ウィナー・リーニェン(Wiener Linien=ウィーン市交通局)が運営するウィーンの公共交通は、地下鉄Uバーンと路面電車に加えて130以上におよぶというバス路線も運行しているが、5つの地下鉄線と、28の路面電車線が輸送の主力となっている。

ウィナー・リーニェン(Wiener Linien)の片道チケットや24時間券などは、この路線図の範囲内にある地下鉄「Uバーン」と路面電車、近郊電車「Sバーン」、路線バスなどで有効(点線になっている部分と空港を結ぶ「CAT」はエリア外なので別料金が必要)(Wiener Linien Network map「Priority service network」に主要駅部分などに日本語での読み方の一例を加えた)

2025年現在は地下鉄路線が5つしかなく、中央駅に乗り入れ中心部を縦断する「U1(赤色)」と、西駅に乗り入れ中心部を横断する「U3(オレンジ色)」の2つさえ乗りこなせれば、観光に大きな支障は生じないのではないか。

両線が交わる「シュテファンスプラッツ(Stephansplatz)駅」で降りれば、ここがウィーンの中心部なので、市内観光を始めるにも最適だ。

シュテファンスプラッツ(Stephansplatz、シュテファン寺院)付近がウィーンで一番の中心地(2024年12月)

加えて、環状道路リンクシュトラーセの左半分を走る「U2(むらさき色)」と、右半分を走りシェーンブルン宮殿へ行く際にも使う「U4(みどり色)」を必要に応じて利用すれば、観光時の移動にも力強い存在となるのではないか。

地下鉄「Uバーン」の乗降風景、自転車を載せられるのもウィーンならでは(2024年12月)

路面電車は30近くも路線があるので、観光客が自由自在に乗りこなすのは大変だが、先ほど紹介した環状道路を走る「1」と「2」や、“ハイリゲンシュタットの遺書の家”へ行く際に使う「37」あたりが観光で使えそうな路線といえる。

地下鉄「Uバーン」と近郊電車「Sバーン」が交わる駅も多い、写真は「U4」と「S45」などが交わるハイリゲンシュタット(Heiligenstadt)駅(2024年12月)

このほか、オーストリア連邦鉄道「ÖBB(ウー・ビー・ビー)」が運行する近郊電車Sバーン(S-Bahn)」もウィーン・ミッテ駅(Wien Mitte、地下鉄Uバーンのラントシュトラーセ=Landstraße駅と連絡)など中心部の一部に乗り入れており、市内区間は地下鉄や路面電車のチケットで共通利用が可能となっている。

値上げで「24時間券」は1500円超に

市交通局「ウィナー・リーニェン(Wiener Linien)」のチケットは、地下鉄Uバーン・路面電車・路線バス、さらに市内区間のSバーンなども共通で、2025年時点は片道(一方向に80分間有効)2.40ユーロ(384円)、24時間券(フリー券)は8.00ユーロ(1280円)となっている。

)1ユーロ(€)=160円で計算

市内交通の「片道券(1 Fahrt=1 ファールト)」は2.40ユーロ(384円)、2026年1月からデジタル券が3.00ユーロ(480円)、通常券は3.20ユーロ(512円)に値上げされる(2024年12月)

初乗り(片道券)として考えると日本円では400円近くすることになる。隣駅や近所まで気軽に使うという環境ではないが、同じ方向(往復は不可)なら80分間有効なので、地下鉄と路面電車、バスなどを乗り継げばそれほど高いというわけではない。

往復利用など3回以上乗り降りする場合は、「24時間券」が1300円弱なので、こちらのほうが割安となる。

市内交通の「24時間券(24 Stunden=24 シュトゥンデ)」は8.00ユーロ(1280円)、2026年1月からデジタル券が9.70ユーロ(1552円)、通常券は10.20ユーロ(1632円)に値上げされる(2024年12月)

なお、2026年1月1日から運賃改定(値上げ)が予定されており、その際にはデジタル券と駅などでの購入では異なる運賃設定に変わる予定だ。

2025年10月時点の主な運賃と、2026年1月の値上げ後新運賃は次の通り。

若干の手数料が上乗せされるが路面電車の車内に置かれた券売機でも片道券は購入できる(2024年12月)

  • 片道券(1 Fahrt=1 ファールト)(一方向のみ80分間有効、乗り換え以外での途中下車は不可):2.40ユーロ(2026年1月以降→デジタル券3.00ユーロ通常券3.20ユーロに値上げ)
  • 片道券(6~15歳)(一方向のみ80分間有効、乗り換え以外での途中下車は不可):1.20ユーロ(2026年1月以降→デジタル券1.50ユーロ通常券1.60ユーロに値上げ)
  • 24時間券(24 Stunden=24 シュトゥンデ):8.00ユーロ(2026年1月以降→デジタル券9.70ユーロ通常券10.20ユーロに値上げ)
  • 7日間券(7 Tage=7 ターグ):デジタル券19,70ユーロ/通常券22.6ユーロ(2026年1月以降→デジタル券25,20ユーロ/通常券28,90ユーロに値上げ)

2026年1月1日から片道券を駅などで買うと3.2ユーロに上がるので、日本円だと512円となる。デジタルチケットでも3ユーロ(480円)という運賃額に変わる。

「ウィナー・リーニェン(Wiener Linien=ウィーン市交通局)」ではデジタルチケットを促進しており、2026年1月以降は紙のチケットより割安に設定する(2024年12月)

また、2025年現在は販売されている「48時間券」(14.1ユーロ)や「72時間券」(17.1ユーロ)は“簡素化”を理由に廃止される。

2026年以降の観光時には、デジタル24時間券(9.70ユーロ、1552円)を購入するのが価格的に手ごろかもしれない。

なお、ウィーン市内の鉄道は改札口に改札機らしきものが置かれておらず、通常は係員もいない

駅にある打刻機でチケットに日付を入れないと有効なチケットにはならない(2024年12月)

乗客が正しい乗車券を持ってるとの前提に立った“信用乗車方式”が採用されているので、打刻機で日付などを入れる“改札”を自らの手で行う必要がある。

係員のチェック時に有効なチケットを持っていない時(未打刻のチケットも同様)は、“罰金”的な追加料金が徴収される。その額は通常の乗車券額に追加して102.40ユーロ(1万6384円)の支払いが必要で、その場で払えず後に振り込む場合は112.40ユーロ(1万7984円)などとなっており、こちらも2026年以降は日本円で2万円以上に“値上げ”される予定だ。

普段はチケットをチェックをしないが、抜き打ちで実施し、有効なチケットを持たない場合は100ユーロ以上の追加料金が徴収される。ウィーン市交通局の調べでは2016年の統計における無賃乗車率は1.6%、2012年には2.7%だったとの数字がある(2024年12月)

空港へは15~25分でアクセス可能

ウィーンは観光スポットが中心部に集中していて巡りやすいことに加え、玄関口となる「ウィーン・シュヴェヒャート国際空港(Flughafen Wien-Schwechat=VIE)」(一般的にはウィーン国際空港と呼ばれる)は中心部から17キロほどしか離れておらず、鉄道なら最短で15分、最長でも25分ほどでアクセスできる。

オーストリアを代表する「ウィーン国際空港」は中心部から鉄道が通じ、アクセス環境が良好。スロバキアの首都・ブラチスラバ(Bratislava)へも50キロほどの距離(2024年12月)

また、オーストリアの隣国・スロバキア共和国(Slovenská republika)の首都ブラチスラバ(Bratislava)」へも50キロほど離れているだけなので近い。ただ、空港から鉄道の直通列車は無いため、中央駅へいったん出て乗り換えるか、空港からはバスの利用が一般的なようだ。

ウィーン国際空港は中心部から17キロほどしか離れていないが、周辺に市街地らしきものは見当たらない(2024年12月)

ウィーン国際空港と日本の間には2025年10月現在、オーストリア航空(OS)が成田空港を結ぶ直行便(OS 051便/OS 052便)を毎日運航し、ANA(全日本空輸=NH)は羽田空港から週に3便(NH 205便/NH 206便)を飛ばしている。

ANAの羽田~ウィーン便は2019年2月に新規就航し、当初は毎日運航していたが、2020年春の新型コロナ禍で運休。2024年8月の再開後は週3日の運航となっている(2024年12月)

同空港は鉄道アクセスが充実しており、ウィーン中心部のミッテ(Mitte)駅や中央駅(Hauptbahnhof)から次の路線で結んでいる。

  1. ザルツブルグなど各地発の高速列車レイルジェット(railjet)」(30分に1本程度):ウィーン中央駅~(ノンストップ、15分)ウィーン国際空港(中央駅からの運賃:4.60ユーロ※主要駅のウィーン・マイドリンクからでも同運賃
  2. 近郊電車Sバーン(S7号線)」(1時間に3~4本):ウィーン・ミッテ駅(Wien Mitte)~(途中8駅、20分~22分)ウィーン国際空港(運賃:4.60ユーロ※始発のフロルズドルフからでも同運賃
  3. シティエアポートトレイン(CAT=City Airport Train)(30分に1本程度):ウィーン・ミッテ駅(Wien Mitte)~(ノンストップ、16分)ウィーン国際空港(運賃:14.90ユーロ

ウィーン国際空港ではオーストリア連邦鉄道「ÖBB」(左)とシティエアポートトレイン(CAT)のチケットカウンターが並んで置かれている(2024年12月)

1)はドイツやザルツブルグ方面などから走ってくる高速列車「レイルジェット(railjet)」の末端区間で、中央駅とマイドリンク(Wien Meidling)駅からは近郊電車と同じ運賃で乗車できる。ただ、中央駅で10分前後にわたって停車する列車が目立つので、マイドリンクから乗ると所要時分が長くなるのが難点。

レイルジェットはオーストリア連邦鉄道「ÖBB」による運行のため、「ユーレイルパス」などのフリー券でも乗車が可能だ。

ザルツブルグなどオーストラリア各地から「レイルジェット(railjet)」でウィーン国際空港まで直行できる(2024年12月、ザルツブルグ中央駅)

2)は空港にも乗り入れる近郊電車「Sバーン(S-Bahn)」の「7号線」(フロルズドルフ=Floridsdorf~ウィーン国際空港~ヴォルフシュタール=Wolfsthal)で、いわゆる通勤電車でも空港へアクセスできる。

ウィーン・ミッテ(Wien Mitte)からの所要は20分から22分。地下鉄Uバーン「U3」「U4」のラントシュトラーセ駅(Landstraße)と隣接するミッテ駅をはじめ、「U6」が終点とするフロルズドルフ(Floridsdorf)や、「U6」と乗り換えできるハンデルスカイ(Handelskai)、「U1」「U2」と接続するプラターシュテルン(Praterstern)など地下鉄との接続駅に多く停車するのも特徴。

ウィーン・ミッテ(Wien Mitte)駅の「Sバーン」ホーム、地下鉄のラントシュトラーセ駅(Landstraße)駅は徒歩で行き来が可能(2024年12月)

また、国際空港の先でS7号線が終点とするヴォルフシュタール(Wolfsthal)駅では、近くのバス停(Wolfsthal,Kirche)からスロバキアのターミナル「ブラチスラバ(Bratislava)Most SNP」まで路線バス(901系統)が1時間に1本程度運行(日曜は減便)されており、10分超でスロバキアの首都まで行くこともできる。

ウィナー・リーニェン(Wiener Linien=ウィーン市交通局)の「24時間券」などのフリー券は、空港駅から2つ手前のシュヴェヒャート(Schwechat)駅までがフリー区間に入っており、2.20ユーロ(2025年現在)のチケットを追加購入すれば、2駅先の空港駅まで約6分でアクセスが可能だ。また、こちらもÖBBによる運行なので「ユーレイルパス」などのフリー券が使える。

ウィーン国際空港に到着した「シティエアポートトレイン(CAT)」、右側はÖBBの「レイルジェット(railjet)」(2024年12月)

3)の「CAT(シティエアポートトレイン)」は空港輸送の専門事業者で、公共交通と比べて運賃額は3倍以上と高額だが、ミッテ駅に専用の待合室を用意し、駅で主要航空会社のチェックインと荷物預かりを可能とするなど快適さを売りにする。所要も16分とレイルジェットと同じレベルだ。

ÖBBも出資している鉄道事業者でÖBBの線路を走るのだが、「ユーレイルパス」などのフリー券は使えない。

ミッテ駅から「CAT」に乗って空港へ

シティエアポートトレイン(CAT)には専用の待合室と「CATシティチェックイン」が置かれている(2024年12月)

日本への帰国時に空港まで「CAT(シティエアポートトレイン)」に乗ってみた。

ユーレイルパスを持っているので、ウィーン・ミッテ(Wien Mitte)駅から「Sバーン」の7号線や、中央駅から空港行の「レイルジェット」に乗れば追加料金をかけずに空港へ行けるのだが、ユーレイルパスでは乗れない“特別な存在”でもあるCATが気になる。

発着するミッテ駅は、ウィーンの最中心部というわけではないが、インネレ・シュタット(Innere Stadt=インナー・シティ)からわずかに離れた位置にあり、CATの運行事業者は「シュテファンスプラッツ(Stephansplatz)から徒歩15分」であるとアピールしている。

シティエアポートトレイン(CAT)の待合室・乗場は駅上部の商業施設内に置かれている(2024年12月)

シュテファンスプラッツはウィーンのいちばん中心部なので、そこから歩いて行けるターミナル駅から空港へ直行できるというのは強みとなるのだろう。

また、ミッテ駅は地下鉄ラントシュトラーセ(Landstraße)に加え、路面電車「O(オー)番」のラントシュトラーセ停留所が至近にあり、「2番」のシュトゥーベントール(Stubentor)停留所からも徒歩5分ほどと市内交通機関への乗り換え環境も良好だ。

待合室はそれなりに広く、商業施設内には飲食店やスーパーもある(2024年12月)

ミッテ駅のCAT乗場は、Sバーンの落書きが目立つ地下ホームとは少し離れた場所にあり、駅の真上に建つ商業施設ビル「ウィーン・ミッテ・ザ・モール(WIEN MITTE The Mall)」の1階(レベル・ゼロ=「EBENE 0」という呼ぶフロア)に利用者専用の待合室と「CATシティチェックイン」が置かれている。

CATシティチェックインでは、オーストリア航空(OS)をはじめ、ルフトハンザ航空(LH)やスイス航空(LX)、ブリュッセル航空(SN)、ブルガリア航空(FB)、クロアチア航空(OU)、ルクスエア(LG)、ノルウェー航空(ノルウェー・エアシャトル=DY)、TAPポルトガル航空(TP)などの搭乗客は、出発の24時間前から75分前までここで機内積み込みの荷物を預けることができる。

オーストリア航空などの利用者はミッテ駅で機内預け入れの荷物を預けることができる(2024年12月)

チェックインと荷物預け入れは、自国と周辺国のフラッグキャリアを中心に対応しているが、羽田空港行のANA(全日空)便には未対応である。

)1ユーロ(€)=160円で計算

レイルジェットやSバーン7号線の運賃4.60ユーロ(736円)と比べ、CAT14.90ユーロ(2384円)と3倍以上にのぼるが、待合室も快適だし、シティチェックインのサービスも使うならそれなりに価値はあるのではないだろうか。

シティエアポートトレイン(CAT)は片道14.90ユーロ(2384円)と高額だが、15歳までは無料という特典も(2024年12月)

ちなみに商業施設ウィーン・ミッテ・ザ・モール内には、オーストリアではおなじみのスーパーチェーン「SPAR(スパー)」の大型版「INTERSPAR(インタースパー)」(8:00~20:00、木・金曜は21時まで、土曜は18時まで営業、日曜休業)や、小型版の「INTERSPAR-pronto(インタースパー・プロント)」(6:00~23:00営業)も入っており、待合室近くにあるので買出しに便利だ。

わずか3両編成、空港まで16分

CATの列車は、黄緑でカラーリングされた専用の2階建て客車3両プラス機関車という短い編成で、需要がそれほど大きくないので運賃が高額なのかと思ってしまう。短編成にすることで30分間隔の運行頻度を確保しているのかもしれない。

CATは2階建ての専用車両を3両つないでいる(2024年12月)

空港までの所要はわずか16分。短距離かつ短時間なので定時運行には自信を持っているらしく、CATが30分以上遅れて予定の飛行機に乗れなかった場合は補償する制度もあると公式サイト上に書かれていた。

ちなみにCATは51%をウィーン空港会社が出資し、49%はオーストリア連邦鉄道「ÖBB」が株を持っているそうだ。

座席の向きは回転しないが車内は3列シートとなっている(2024年12月)

列車はミッテ駅の商業ビルの下にある専用ホームを出発すると、空港までノンストップで走り続ける。CATもオーストリアの一般的な鉄道と同様に改札口は無く、車内でチケットのチェックも行われなかったし、座席も自由席だった。

意外に変化の多い車窓は見どころ

CATはミッテ駅から都心部外周の地下を貫く「Sバーン本線(S-Bahn Wien Stammstrecke)」を通り、レンヴェーク(Rennweg)という駅でSバーン7号線が分かれ、ミッテ駅から3つ目のガイゼルベルクシュトラーセ(Geiselbergstraße)駅の手前で地上に出る

中心部の地下を走るSバーン本線(写真はミッテ駅付近、2024年12月)

Sバーン本線は、日本で言うと横須賀・総武快速線の地下区間みたいな存在で、“国鉄”の郊外電車を都心に乗り入れさせるためにつくられたバイパス線となっており、中央駅を通ってマイドリンク駅まで通じている。

Sバーン本線でウィーン中心部にもっとも近いのがミッテ駅で、最中心部のシュテファンスプラッツから見るとミッテ駅も“街外れ”という位置だが、さらに離れた中央駅やマイドリンク駅は「郊外」と言えそうだ。

Sバーン「S3」「S4」の車両一例(2024年12月)

ウィーン中央駅(Wien Hauptbahnhof)に停車するSバーン車両(写真右奥)(2024年12月)

ミッテ駅からSバーン7号線でわずか4駅、「ウィーン中央墓地」の最寄りであるツェントラルフリートホーフ(Zentralfriedhof=日本語で中央墓地の意味)駅あたりから急に家々が少なくなってきた

巨大な墓地に加え、至近にはオーストリア最大と言われる大型操車場(ウィーン=クレデリング操車場=Zentralverschiebebahnhof Wien-Kledering)を設けるくらいの土地柄なので、もう完全に郊外の風景なのだが、ウィーン市交通局の24時間フリー券などでは次のシュヴェヒャート(Schwechat)駅までフリー区間になっているし、片道券でも乗車できる。

“中央墓地駅”に続いて車窓には巨大な操車場が現れる(2024年12月)

今、CATが走っている線路(Sバーン7号線)は「プレスブルク線(Pressburger Bahn)」と呼ばれ、第二次世界大戦の前後まで国境を越えてスロバキアの「ブラチスラバ(Bratislava)=旧プレスブルク」へ通じていた。今はウィーン空港から40キロ弱先の国境近くに位置するヴォルフシュタール(Wolfsthal)駅で線路が途切れている

7号線が終点とするヴォルフシュタール駅の8キロほど先には、「ブラチスラヴァ・ペトルジャルカ(Železničná stanica Bratislava-Petržalka)」というスロバキア国鉄(ŽSR)の主要駅があるのにもったいないと思う。線路が通じていれば、このCATもウィーンとブラチスラヴァの双方から“空港行国際列車”となっていたかもしれない。

空港に向かって右側の窓には一面の農地が広がり、自然いっぱいの農業都市の風景(2024年12月)

シュヴェヒャートを出ると、右手に一面の農地左手には煙突から煙をはき続ける巨大製油所という、座った場所で大きく印象が変わりそうな車窓が左右で展開されているうちに、列車は農地のなかに置かれたウィーン国際空港の駅に着いた。

空港に向かって左側の窓には巨大な製油所が現れ、活気ある工業都市の風景(2024年12月)

わずか16分という距離だが、空港にいたるまでの車窓に変化が大きいことに驚かされる。長い欧州旅の最後に、思いもかけず楽しい小さな鉄道旅となった。

(2024年12月旅行、2025年10月記事公開)

※一連の「ヨーロッパ鉄道紀行」おわり

■ウィーン観光に役立つリンク


「レイルジェットでザルツ&ウィーンへ」の記事はこちら

・ヨーロッパ鉄道紀行の記事一覧はこちら

「日本発の欧州便、往復すれば地球一周」の記事はこちら(ウィーン発の日本行ANA便の飛行ルートについてなど)