仏パリ(Paris)から独ミュンヘン(München)まで、スイス・チューリッヒ(Zürich)経由の1000キロ超を1日で駆ける鉄道の旅に出た。まずはフランスの高速列車「TGV」で国境近くの都市・ストラスブール(Strasbourg)へ移動し、ローカル列車で国境を越えてドイツへ入ろうと思う。
今日は2024年のクリスマス。未明に祝祭なのかパリ市内にあるホテル近くの道路では車のクラクションを鳴らし続ける大騒ぎが発生して睡眠が奪われ、こんな時期に旅をしてしまった後悔も少し感じる。
昨日はクリスマスイブだったので、私も夕刻にはバスティーユ広場近くの「ケンタッキー」でフライドチキンを買って一応は祝ってはみたのだが、同じような行動をとるパリ市民は誰一人として見かけず店内は閑散としていた。
パリ東駅と脳裏に残る哀愁音
日本で言う元旦のような位置付けであろう12月25日だというのに、パリ東駅(Paris Gare de l’Est)は早朝から旅行や移動の客で賑わっていて、クリスマスらしさ、というものは特に感じられない。
スリに警戒しながらベンチで列車案内板を眺めているが、直前にならないと発車ホームの番線が表示されないあたりは欧州ならでは。ロンドンのターミナルでも発車ホームが発表された瞬間に大量の客が列を成して移動しているシーンを見かけた。
ただ、ドイツやスイスでは時刻表にあらかじめ発着番線が記載されている駅も目立つので、欧州鉄道でも国によって事情が異なるのかもしれない。
パリ東駅で列車を待つ間、脳裏に刻み込まれたのが、哀愁を帯びた高音で響く「トゥ・トゥ・トゥーラ」のように聴こえる短いサウンドロゴだった。
日本の都心駅ホームで電車が近づく際に鳴らされる電子音にも似ているが、こちらは女性の声を合成したものらしく耳に残る。
フランス国鉄SNCF(Société Nationale des Chemins de fer Français)が駅や車内での案内時に流すことから“SNCFジングル(JINGLE)”とも呼ばれているようだ。
こうした情報は日本語でもインターネット上に多数発信されており、このSNCFジングルを忘れられなくなった旅行者がいかに多いかが分かる。
列車案内の度に流れるので、中長距離列車に1回乗るだけで何十回も聴いてしまい、脳裏に残るのだろう。私は十数分駅にいただけでそんな状態になってしまった。
老朽化が進みつつあるTGV車両
7時58分発のストラスブール行のTGVは、出発の20分ほど前にホームが「25」であると表示された。
そもそもパリ東駅では25・26・27・28番線の付近でTGVの車両を見かけるので、フランス東部方面行の高速列車は正面右端の一帯から発車するのだろう、と目星は付くのだが、まったく違うホームとなる場合もあるので油断がならない。
旅愁を醸し出すSNCFジングルと、ほとんど聞き取れないフランス語の自動放送に促され、線路が途切れた車止めの脇から25番線ホームに入る。
ホーム上にはゲートがあって、インターネットで購入した切符……、というより単にプリンターでA4用紙に印刷しただけのバーコード部分を読み取らせて先へ進む。
欧州の中長距離列車に乗る際には改札などなく、出入口か車内でチェックするというイメージを持っていたが、高速鉄道では事情も異なるのだろう。車内では検札も行われた。
ホームに停まっている白地に黒とピンクのラインを巻いたTGV車両は、少し前に北海道で走っていた高速ディーゼル特急のような雰囲気がある。ところどころで塗装がはがれ、全体的に色褪せていた。
フランス国鉄を代表する最優等列車なのだからもう少しなんとかできぬものかと思うが、1990年代中ごろまでにつくられたというこの高速車両は、車内こそリニューアル済みなので古さを感じさせないが、出発後に短時間で一部のトイレが壊れていたので、老朽化が進んでいる。
ストラスブール方面への高速鉄道線「LGVエスト(LGV Est)」は2007年に開業し、2016年に全線完成した新しい部類に入るTGV路線のはずだが、車両は他のTGV路線からの“お古”を改良して済ませたようだ。

2017年から使われ始めたTGVの「inOui(イヌイ)」というブランド名は、フランス語の「inouï(インウイ=驚くべき)」から採ったものだという。TGVにはSNCFの子会社が運行する格安ブランドの「Ouigo(ウィゴー)」もあり、こちらはユーレイルパスでは乗れない(2024年12月)
このTGVには「inOui(イヌイ)」なる愛称だかブランド名だかが付けられていて、格安TGVの「Ouigo(ウィゴー)」と区別しているが、色鮮やかな青い塗装の格安ウィゴー車両のほうが新しさを感じる。
平均時速210キロでフランス東部へ
TGV“イヌイ(inOui)”2407列車ストラスブール行は、出発時間の7時58分になると、何となくといった感じで静かに動き出し、薄暗いパリ東駅のホームを離れた。
ストラスブールまでは高速線経由で約420キロの距離があり、所要は2時間1分。平均時速は約210キロということになるが、パリ市内は郊外列車「RER(エール・ウ・エール)」なども並走する一般路線なので100キロに満たない速度で走っている。
日本のJRは線路の幅が狭い「在来線」と、広い高速線の「新幹線」という形で明確に分けられているが、欧州は線路幅が同じなので高速線と一般線を自在に行き来できる。
高速線を途中で離脱し、一般線上にある駅に立ち寄ってからまた戻ってくるTGV便も存在していて、高速道路と一般道みたいな感覚といえる。

高速線「LGV東線(LGV Est)」の位置図、線上には3つの“TGV駅”が置かれているが、いずれも従来の駅や街からは離れている(eurail.comの「ユーレイル路線図 (Eurail map)」を加工・加筆して制作)
パリの近郊を十数分走って郊外に至ると「LGV東線(LGV Est)」と呼ばれる高速線に入ったようで、速度が上がった。スマートフォンの位置表示を見ると、ヴェール・トルシー(Vaires Torcy)という、「ディズニーランド・パリ」に比較的近い駅付近で“在来線”と分かれていくようだ。
ユーレイルパスでも指定料金が必要
8時半を過ぎて外の景色がようやく見えるようになってきたが、人の生活圏から離れた農地をまっすぐに貫く高速線を走り続けることになり、自然美こそ感じる車窓だが単調さには眠気が襲ってくる。
車内を散策がてら4号車にある「バー(BAR)」と名付けられた売店へ向かう。この“TGVレゾ”(TGV Réseau)と呼ばれる車両は10両つないでいるが、両端は動力車なので、客を乗せるスペースは8両分しかなく、このうち0.7両分くらいが飲食スペースに割かれている。
車内を見ていくと、2等車の2人掛けシートは、赤紫やオレンジの見た目も鮮やかなデザインにフランスらしさも感じるが、座り心地が良いとは思えないし、例によって“集団見合い式”で回転もしないので席の半数は進行方向と逆向きだ。
1等車は3両あり、シックな雰囲気の1人掛けと2人掛けのシートが並び、逆向きの座席でなければそれなりに快適性は確保できるかもしれない。ただクリスマスの今日は1等車でさえ窮屈ではある。
フランスのTGVは「ユーレイルパス(ユーレイルグローバルパス)」で利用する際にも指定席の確保を必須としており、列車を利用する度に20ユーロ(3200円、2等車の場合)ほどを支払う必要があるせいか、思わず辛口な感想になってしまう。
(※)1ユーロ(€)=160円で計算
まだフランス東部に高速線がなかった頃、ストラスブール方面へ向かう優等列車は、何両もの客車を連ねてドイツ・オーストリア方面へ向かう国際特急で、「モーツァルト」とか「オリエントエクスプレス」など旅ごころをくすぐる愛称が付けられていた。
オーストリア国鉄(現オーストリア連邦鉄道)「ÖBB」のオレンジ色の客車を使ったEC(ユーロシティ=国際特急)「モーツァルト(Mozart)号ウィーン(Wien)行」をパリ東駅で見たときは、これぞ国境を超えるヨーロッパの鉄道だ、と感動した。
コンパートメント客車は終点のウィーンまで乗り通しても疲れなさそうな快適さで、ユーレイルパスさえ持っていれば何度でも自由に乗れた。四半世紀ほど前の思い出だ。
今は追加料金を取られたうえに窮屈な座席へ追いやられるが、国際特急EC時代と比べるとストラスブールまでの所要時間は半分以下になった。
日本で在来線の寝台列車・優等列車の廃止と車窓の犠牲を引き換えに新幹線が開業したケースと同じで、料金が高いうえに車窓もつまらないが移動時間は大きく短縮できる。
立食カウンターの並ぶ売店、というか“バー”という名のビッフェで苦い珈琲を飲みながら、2000年代初頭の国際特急ECには必ず食堂車を連結していたことや、仏フランで払うか独マルクがいいのかと悩んだことを思い出した。
そして今、TGVの“バー”で単に「コーヒー」と注文すると、当たり前のようにイタリア企業「illy(イリー)」の小さなエスプレッソが出てくることも学んだ。
車窓を楽しむなら“在来線”列車に
パリ東駅を出発して40分ほどで最初の停車駅「シャンパーニュ・アルデンヌ(Champagne-Ardenne TGV)」に着く。

シャンパーニュ・アルデンヌTGV駅は街外れに置かれているが、“在来線”のTER列車が乗り入れ、中心都市「ランス(Reims)」のトラムが駅前に停留所を置くなどTGV3駅のなかではもっとも利便性が高い(2024年12月)
いわゆる“シャンパーニュ地方”の玄関口となるTGV駅だが、17万超の人口を持つランス(Reims)の中心部からは若干離れている。
大きな駅舎とホームを持つ割に賑わいは無く、世界に誇る「シャンパン」の“総本山”らしい華やかさも皆無。日本だったらホーム上に「シャンパンの里へようこそ」といった大看板でも出すだろう。ここでは芝生の法面しか見えない。
味気のない黒いアスファルトが敷かれたホームでは、TGVに乗る高齢の夫が見送りにきた妻と抱擁を交わすシーンが見られ、新幹線の政治駅めいた雰囲気のなかで唯一旅情を感じた一瞬だった。
シャンパーニュ・アルデンヌを出発しても車窓にはなだらかな丘陵農地が続いているだけで、高速線に入って以降、大きな変化はない。日本の東北新幹線あたりで高架橋から延々と水田を眺めているような感覚だ。
かつて国際特急ECが走った“在来線”を経由し、パリとストラスブールを結ぶ「TER(テー・ウー・エル=Transport express regional)」と呼ばれる地域列車は、今も1日最大2往復だけ残されている。
このTERは、シャロン・アン・シャンパーニュ(Châlons-en-Champagne)やバル・ル・デュック(Bar-le-Duc)、ナンシー(Nancy)など沿線の12駅に立ち寄りながら500キロ超の道のりを5時間かけて走っていて、楽しそうだなと思う。

スイス連邦鉄道(SBB CFF FFS)公式サイトによる経路検索は停車駅や地図などの細かい案内がある。パリ東駅からストラスブールまでの列車を検索するとTGV以外にもわずかながら「TER」での直通列車が残っていることが分かる(2025年8月時点の検索結果)
TGVと違って指定券など不要でユーレイルパスがあれば自由に乗れるし、フランスで鉄道旅行を楽しむなら時間を確保してTERに乗るべきなのかもしれない。かつて国際特急ECでフランス東部の車窓に感動したことを思い出した。
高速線上に置かれた何もない駅
パリから1時間10分弱、列車は「ムーズTGV(Meuse TGV)」という小駅に停車する。山あいの信号所にホームを置きました、といった雰囲気で、霧でぼんやりとしか見通せない駅周辺は山小屋のような木造駅舎と駐車場くらいしか確認できない。
ムーズ(Meuse)というのは駅が位置する県の名で、周辺に大きな町が見当たらないTGV駅なのだが、私の隣に座った青年は、前駅のシャンパーニュ・アルデンヌから乗ってきて、この山小屋駅で降りていった。どんな用での移動なのだろうかと思う。
なだらかな緑の丘が連なる車窓は北海道のようで美しいはずなのだが、あまりに高速で通過するせいか眠気を誘われる。横のふくよかなマダムたちは喋るのにも飽きたようで、足を投げ出しての睡眠体制に入った。
列車は高速線「LGVエスト(LGV Est)」では3つ目となるTGV駅「ロレーヌTGV(Lorraine TGV)」を一瞬で通過する。先ほどの山小屋駅よりは近代的な設備のようだが、やはり駅の周辺に街の姿は見当たらない。
遠くにぽつぽつと教会の塔や三角屋根の家が見え始め、それらが近づいてきた頃に列車は高速線を下りてストラスブール近郊の“在来線”に入った。そして、丘から街に入ると必ず落書きに出迎えられることになる。
終着駅が近づいてきたことを知らせる操車場には、巨大文字やらイラストやらで埋め尽くされた貨車さえ置かれている。アートとでも言いたいのだろうか。JRなら即座に撤去廃車するレベルの惨状だ。
落書きの多さに呆れているうちに線路が尽きて、列車はストラスブール駅の大屋根の下に停車した。パリから2時間1分、ホームに降り立つと、冷たいと思わず口に出るほどパリとはまったく違う空気が流れている。400キロ以上も移動したことを実感させられた。
仏独に翻弄されたストラスブール
ストラスブールは人口28万超、フランスでは7番目の人口規模をようする東部の中心都市で、ライン川に敷かれた国境が至近に迫り、何度かドイツ領になった歴史も持つ。

ストラスブール駅は「ストラスブール・ヴィル(Strasbourg-Ville)」が正式名。日本で言う明治16年、1883年までに建てられたという古い駅舎(写真左側)を保存すべく、TGV開業を機に旧駅舎を覆うガラス張りの駅空間に改修された(2024年12月)
地理的に仏独の対立に翻弄されてしまう街だったが、今では駅の地下に設けられた停留所から30分ほどトラムに乗れば、対岸にあるドイツの街「ケール(Kehl)」まで容易に行くことができる。
路面電車が国境を越えて日常的に他国へ乗り入れているというのは欧州統合の象徴めいていて興味深く、一度は乗ってみたいが、今日中にスイス・チューリッヒ経由でドイツ・ミュンヘンまで行くには時間が足りない。
そもそもストラスブールは旧市街地が世界遺産になっていて、1泊して観光する価値のあるレベルの街だ。なのに、次の列車まであと1時間弱。
クリスマスでほとんどの店が閉まっている駅前だけを速足で散策し、先を急いだ。

日本で言う“駅前商店街”的なメール・キュス(Maire Kuss)通りを抜けるとフォ・ロンパール運河(Canal du Faux-Rempart)が現れ、橋の向こうには見どころの一つとされる「サンピエール教会(Église Protestante Saint-Pierre-le-Vieux)」が見える。このあたりまでなら1時間以内での「駅前観光」が可能(2024年12月)
仏独間を結ぶ2両のローカル列車
ストラスブールの公営トラムとともに仏独国境間を結んでいるのが「SWEG(Südwestdeutsche Landesverkehrs-GmbH=南西ドイツ鉄道)」という地域鉄道で、「オルテナウSバーン(OSB=Ortenau-S-Bahn)」とも呼ばれる。
ドイツ南西部に位置するバーデン=ヴュルテンベルク州(Land Baden-Württemberg)のローカル列車や路線バスの運行を担う公営企業による運行で、30分から1時間に1本の間隔で列車をストラスブールまで乗り入れている。
今も仏TGVや独「ICE(InterCity Express)」といった国際列車が通り抜ける仏独連絡の“国鉄線”を走るローカル列車ということで、ユーレイルパスでも乗車が可能だ。
欧州では線路の所有者と、列車を走らせる事業者が異なることがあり、旧国鉄の「仏SNCF」や「独DB(Deutsche Bahn AG=ドイツ鉄道)」以外の鉄道会社が運行する列車の場合、まれにユーレイルパスの適用外となっていることがある。

欧州の主要鉄道会社のロゴマーク、上段左からドイツ鉄道(DB)、オーストリア連邦鉄道(ÖBB)、イタリア国鉄(FS=フェッロヴィーエ・デッロ・スタート)、フランス国鉄(SNCF)、ユーロスター(Eurostar)、<下段>スイス連邦鉄道(SBB CFF FFS)、スペイン国鉄(Renfe=レンフェ)、オランダ鉄道(NS)、ベルギー国鉄(NMBS/SNCB)、スウェーデン鉄道(SJ AB)。こうした“国営系”が運行する列車はユーレイルパスが問題なく使える。eurail.comには適用対象となる鉄道会社の一覧表も掲載されている(eurail.comより)
国の税金で線路を敷いたので、いち鉄道会社が独占すべきではない、という考え方によって公営系以外に複数の事業者が参入できるようになったためで、いわば“鉄道の自由化”だ。近年はドイツ鉄道DBが英仏海底トンネル経由でICEのロンドン乗り入れを狙う動きもあったが、まだ実現していない。
一方、需要の大きい都市間輸送には新規参入も見られるが、赤字必至の地域輸送を担おうなどという民間事業者はなかなか現れない。結局は行政が公営企業をつくって自ら運行することになったのがこれから乗る南ドイツのローカル列車である。日本で言う第三セクター鉄道に似ている。
ライン川の対岸(右岸)にあるドイツのケールを経て、小都市のオッフェンブルグ(Offenburg)までを結ぶこの鉄道は、今も仏独間の国際列車が通るルートゆえか、「ヨーロッパバーン(Europabahn)」という壮大な別名も持っている。
ただ、ストラスブール駅の乗場は大屋根を離れたもっとも外れで特設されたように存在し、別の鉄道会社に乗り入れをさせてもらった“居候(いそうろう)感”は否めない。
ドイツ側からの2両編成の列車が着くと大量の乗客が降りて通路を埋め尽くした。休日の午前中、手ごろな時間帯に中心駅へ着く便ということもあるが、これだけの人が国境を往来していることに驚かされ、トラムが頻繁に走るだけのことはあるなと思った。降りてくる客を見ていても、フランス人とドイツ人の見分けはまったく付かない。
あっけなく越えた国境のライン川
ストラスブール10時52分発の独オッフェンブルグ行「SWE 87423列車」は、どこか路面電車感のある白いディーゼルカーを2つ連ねた列車だった。
車体には州の地域交通ブランドである「bwegt」と獅子を描いたマークが映え、修道士と熊がデザインされた沿線自治体の紋章もユニークで、田舎のローカル車両という雰囲気は感じられない。
車内はバーデン=ヴュルテンベルク州の紋章に登場する獅子が描かれた2人掛けのシートが並び、そのデザインはどこかスポーツカーの座席を思わせた。まだフランス国内ではあるが、もうドイツに入った感覚に陥る。
定員の6割くらいの客を乗せて出発した列車は、5分ほど走ってストラスブール市街の高架上に置かれたクリンメリ・メノー(Krimmeri Meinau)という小駅に停まった。ここがフランス側で最後の停車駅となる。

仏ストラスブールから独オッフェンブルグまでのルートと途中駅の位置図。ドイツ側ではケール(Kehl)だけがストラスブールの都市圏に組み込まれざるを得ないような位置にある(スイス連邦鉄道(SBB CFF FFS)経路検索(www.sbb.ch/en)の地図に駅名とスポット名などを日本語で加えた)
工場や貨物ヤードといった工業系の施設が目立ってきて、大きな川を鉄橋で越えたのでもうライン川かと思ったら、こちらは並行する運河のようで平べったい大きな船が停泊しているのが見える。中洲の巨大工場群を過ぎたところが国境のライン川だった。

国境のライン川を渡る、向かいに見えるのはトラムが通る「ベアトゥス・レナヌス橋(Beatus Rhenanus Bridge)」、その奥に自動車道のヨーロッパ橋(The Europe Bridge)」がある(2024年12月)
ライン川は大河に違いないが、独仏国境という大袈裟な雰囲気はなく、2両のディーゼルカーはあっけなく渡り切ってすぐにドイツ側のケール駅に停車する。
ストラスブールからここまでわずか10分。市境を越えたくらいの感覚しかないが、国境駅らしく多くの留置線を持つ駅構内で、ドイツ鉄道を象徴する「DBマーク」付きの赤い機関車が停まっているのが見え、ここはドイツ国内であることを認識した。
かつて国際特急ECもこの駅に停まると国境警察官が乗ってきて車内を巡回していた記憶があるが、今はこのローカル列車に国境の緊張感はまったくない。
ライン川右岸を走る“本線”と合流
国境の街・ケールを過ぎると急に一面が農地ばかりの車窓となり、ドイツのローカル線らしくなってきた。畑のなかにホームを置いただけのような集落駅が続く。
三叉路となっているアッペンヴァイラー(Appenweier)駅でライン川右岸を貫く“本線”に合流し、7分ほど走って終点のオッフェンブルグに着いた。
ストラスブールから30分で着いたオッフェンブルグは、人口約6万3000の規模を持つオルテナ郡(Ortenaukreis)で最大の都市だという。ここまで乗ってきた“オルテナウSバーン(OSB=Ortenau-S-Bahn)”の本拠地でもある。
マンハイム(Mannheim)からカールスルーエ(Karlsruhe)やハイデルベルク(Heidelberg)、フライブルク(Freiburg)などを経て、スイスのバーゼル(Basel)まで約270キロを結ぶ「マンハイム・バーゼル線(Bahnstrecke Mannheim Basel)」と呼ばれる重要路線上で見ると、オッフェンブルグは真ん中に近い位置だ。
本日の目的地であるミュンヘンへ向かうには、ライン川の下流方面にあるカールスルーエから州最大の都市・シュツットガルト(Stuttgart)を経由して行くのが一般的だが、せっかくユーレイルパスを持っているので寄り道をしたくなった。

オッフェンブルグからミュンヘンまでの鉄道路線図、シュツットガルト経由のほうが早く着けるが、スイス(バーゼル・チューリッヒ)経由でも行くことはできる(eurail.comの「ユーレイル路線図 (Eurail map)」を加工・加筆して制作)
逆に上流方面にあるスイスのバーゼルへ向かい、チューリッヒを経由して再びドイツに戻るルートを採ることにした。
英仏と違い、ドイツとスイス、オーストリアは“ユーレイルパス友好国”なので、ほとんどの列車に予約不要で乗ることができる。これからドイツが誇る高速列車「ICE」に乗ってスイス方面へ向かおうと思う。
(2024年12月旅行、2025年8月記事公開)





























