欧州鉄道ロンドン→ウィーン2000キロ

2024年の年末にイギリス・ロンドンからオーストリアのウィーンまで、英仏海峡トンネル(ユーロトンネル)とフランス・パリなどを経由して鉄道で移動する機会に恵まれた。

ロンドンからウィーンへは、ドイツ南部のシュトゥットガルト(Stuttgart)とミュンヘン(München)を経由した最短とみられる鉄道ルートでも1800キロ弱の距離がある。

日本で言えば東京駅から稚内駅まで、あるいは鹿児島中央駅までといった区間よりも長いが、高速鉄道網が充実している欧州では1日で移動することも不可能ではない。

たとえば、ロンドンを朝7時に出発する高速列車「ユーロスター(Eurostar)」に乗って英仏海峡を越え、パリやミュンヘンなどでフランスとドイツ、オーストリアの高速列車に乗り継いで行けば、その日の21時30分にはウィーンまでたどり着ける。

欧州では外国人観光客向けに33カ国の鉄道路線が乗り放題となる「ユーレイルパス(ユーレイルグローバルパス)」が販売されており、鉄道で旅する環境は悪くない。

英仏独など欧州33カ国の鉄道に乗れる「ユーレイルグローバルパス」は4日から最長3カ月まで有効期間が選べる。近年は写真の“紙版パス”を扱う代理店が減りつつあり、スマートフォンを使った「モバイルパス」が主流となっている

ユーレイルパス(グローバルパス)は、2025年1月時点の販売価格が4日間(1カ月間の任意の計4日に使用可)・2等車用で300米ドル(Eurail.com販売)で、1ドル155円として計算すると4万6500円。円安と欧米での物価高騰が続くなか、日本人にとっては厳しい価格帯だが、この時期にヨーロッパを訪ねるうえでは適価ともいえる。

なお、12歳から27歳までの年齢層を対象にした「ユース」では225米ドル(約3万4900円)まで割引される。

ユーレイルパスといえば、かつてロンドンとパリを結ぶ「ユーロスター」で使えない点は弱みだったが、2017年からは30ユーロ(2等車用、2025年1月時点)ほどの座席指定料金を支払えば、席数限定ながら利用できるように変わった。

1ユーロ160円で計算すると4800円の“指定券”を購入すればイギリスから欧州鉄道の旅をスタートできるようになったのはありがたい。日本で言えば、乗車券部分だけが有効で、指定席特急券は別に買え、といった感覚かもしれない。ただ、ユーレイルパスでの利用者向け座席数はかなり制限しているらしく、早めに指定券を確保するほうが良い。

ユーレイルパスでフランス国鉄SNCFのTGV(写真左)は指定券を買えば乗れるが、右側に写る“格安TGV”の「Ouigo(ウィゴー)」には乗れない。近年は各国の国鉄以外の事業者も主要区間に高速列車を走らせており、ユーレイルパスで乗れないこともあるので確認が必要

一方、フランスでも高速鉄道「TGV」の路線は全車指定席としているので、こちらも1列車あたり20ユーロ程度(列車により異なる)の座席指定料金を徴収されるが、ドイツやオーストリア、スイスなどに入ってしまえば、全車指定席という列車はほとんど見かけない。)フランス国内では高速線を走る「TGV」ではなく、日本でいえば“在来線”を通る「TER(Transport express régional)」と呼ばれる地域間急行で移動する方法もある。TGVより時間はかかり運転本数も多くないが指定券は不要

ドイツの「ICE」(写真)をはじめ、オーストリアやスイスの列車では基本的に座席を指定する必要はないため、ユーレイルパスでも気軽に乗れる

ドイツの「ICE(Intercity Express=インターシティエクスプレス)」やオーストリアの「Railjet(レイルジェット)」、スイスの「EC(Euro City=ユーロシティ)」といった優等列車を含めて自由に乗車可能だ。これらの国の主要列車は、座席を指定するかしないかは利用者の自由で、誰も確保していない席は「自由席」ということになる。座席指定する際の追加料金も廉価だ。

こうした背景から、ロンドンからフランスのドイツ国境までは最速列車で坦々と移動し、ドイツに入ってからスイスへ寄り道をして少し周遊するという次のようなルートでウィーンへ向かった。

  • ロンドン(英)→パリ(仏)【記事】:ユーロスター(全車指定席)※ユーロスター(Eurostar)は英仏海峡トンネルを経由し、ロンドン~パリ/ロンドン~ブリュッセル(ベルギー)を結ぶ国際高速列車
  • パリ(仏)→ストラスブール(仏、Strasbourg)【記事】:TGV東線(全車指定席)※TGVはフランス国鉄「SNCF」が運行する高速列車、“フランスの新幹線”とも呼ばれる
  • ストラスブール(仏)→オッフェンブルク(独、Offenburg)【記事】:ローカル列車(各駅停車)
  • オッフェンブルク(独)→バーゼル(スイス、Basel)【記事】:ICE(インターシティエクスプレス=ドイツ鉄道「DB」が運行する高速列車)
  • バーゼル(スイス)→チューリッヒ(スイス、Zürich)【記事】:IC(インターシティ=国内線特急)
  • チューリッヒ(スイス)→ミュンヘン(独、München)【記事】:EC(ユーロシティ=国際線特急)
  • ミュンヘン(独)→ザルツブルグ(オーストリア、Salzburg)【記事】:Railjet(レイルジェット=オーストリア鉄道「ÖBB」が運行する高速列車)
  • ザルツブルグ(オーストリア)→ウィーン(オーストリア)【記事】:Railjet(レイルジェット)

ロンドン→パリ→ストラスブール→チューリッヒ→ミュンヘン→ザルツブルグ→ウィーンのルート図、全行程で約2000キロ近くにおよぶ。緑色は高速専用線、紫色は主要路線(eurail.comの「ユーレイル路線図 (Eurail map)」を加工・加筆して制作)

この先、イギリス、フランス、ドイツ、スイス、オーストリアと5カ国・約1980キロにわたる鉄道の旅を紹介するとともに、途中の大都市における市内交通の状況や、ロンドンとウィーンの空港鉄道、日本と欧州の航空路線についても触れていきたい。

(2025年1月公開)