関西で生まれ育って首都圏に長年暮らしているので、東京と大阪間の移動は数えきれないほどこなしてきたが、何とか楽しい方法はないだろうかと未だに模索を続けている。
10代の頃は東海道新幹線に乗るだけの金銭的な余裕はないものの、時間だけはあったので「青春18きっぷ」を使って昼間の東海道本線(在来線)を延々と乗り継ぐことが多かった。
関西圏と中京圏には「新快速」があるし、熱海から東京までの首都圏区間は列車本数も多いので、列車が少なく編成の短い“関ケ原越え”と浜松から熱海間の静岡県内区間さえ耐えれば、当時はそれほど辛いと思ったことはなかった。
時には「大垣夜行」(大垣~東京間の快速列車、その後に快速「ムーンライトながら」となって2021年3月に完全廃止)に乗れば、乗り換えの手間が省けるし、宿泊代も浮いた。
時おり遠方への旅行で「ワイド周遊券」や「ミニ周遊券」を購入した際は、在来線の急行列車や名神・東名ハイウェイバスにも乗ることができた。
在来線には「たかやま」(大阪~岐阜~高山)や、関西線経由の「かすが」(奈良~名古屋)、東海道本線の「東海」(東京~静岡)といった昼間の急行列車が走っており、これらに乗れば少しだけ得をした気持ちになった気がする。
名神・東名高速ハイウェイバスは、国鉄が運営していた名残りで周遊券でも乗れるようになっていたのだが、高速バスと言っても高速道路上を走る路線バスといった位置付けで、事前に予約の必要もなく、いつ行っても乗れたのも有難かった。
所要時間的には東海道本線の快速や各駅停車を乗り継ぐ場合と大きく変わらなかったが、バブル経済の余韻を残していた1990年代は、車内でドリンクサービスがあったり、映画上映があったりと快適そのもの。
しかも格安の周遊券で乗れるのだから、当時の貧乏学生にとってはこれ以上ない贅沢な東海道移動手段だった。
働くようになってからは、体力と時間の関係で「18きっぷ」というわけにもいかず、周遊券も廃止されたので、東海道新幹線を片道だけとか一部区間だけを使うことも多くなった。
時には東京と大阪の間を飛行機で移動したこともあったが、空港への移動や手荷物検査など新幹線以上に疲れる。伊丹空港に降りる際の眺めは楽しいのだが、黒雲のなかで機体が揺れ続けたりすると二度と乗りたくなくなってくる。
事前予約制の高速バスは運賃こそ安いが窮屈で、途中のサービスエリアで逃げ出したくなる。いちいちカーテンを締め切らなくても良いと思うのだが。
東京港と徳島港を結ぶ夜行フェリーに乗るという奇策を試したこともあったが、徳島から大阪までの時間がかなりのネックだった。大阪へ行くのに徳島を経由するのは無理がある。
密かに最大のヒットだと思っているのが、大阪駅を0時33分に出発する寝台特急「サンライズ瀬戸・出雲」に乗ることで、翌朝7時には東京駅に着ける。
大阪で仕事の際に「夜の懇親会」を組み合わせることで、会社経費による“業務移動”の手段として活用していたが、だいたい“懇親会”自体が楽しくなって、サンライズに乗車してから下車するまで記憶がほとんどないというケースも多々。
それなりに料金のかかる寝台車への乗車がもったいない気がして、この移動手段はあまり使わなくなった。
時間に余裕のある際は、往路や復路に中央本線や北陸本線などを経由して変化を付けることもあったが、東海道と比べるとどうしても利便性に難がある。
最近は考えるのも億劫になって、かといって予約を取るのも面倒で、「のぞみ」の自由席で東京と大阪間を単純往復という“無抵抗”状態が続いている。
新型コロナ禍の不安もおおむね解消した今年は、久しぶりに東海道新幹線と北陸経由で東京と大阪間を移動することにした。
新幹線だらけになる直前の北陸路を見ておこうと意気込んでいたのだが、元旦に発生した能登・金沢・新潟地方の大地震で、鉄道で旅するどころではなくなってしまった。
結局は今冬も往復ともに東海道新幹線に揺られることになっている。
次こそ、東海道移動の新たな旅を発見してみたい。



